あめとくろねこ【鶴清】【#つるきよ版深夜の60分一本勝負】

つるきよ版深夜の60分一本勝負
#つるきよ版深夜の60分一本勝負
お題:猫

鶴丸国永 は 猫 を かっている

鶴丸国永 は あめのひ に みちばた で ふるえている 黒猫 を ひろった

そっと ふろ に いれて やさしく しずく を ぬぐい あたたかな ふとん を よういして たいせつ に たいせつ に した

そのおかげ で よわって いまにも しんでしまいそうだった 黒猫 は げんき に なった

黒猫 は くびわ を していた

げんき に なったのなら もと の いえ に かえさなければ ならない

けれど

鶴丸国永 は まよっていた

あめのひ に ひろった 黒猫 は ずいぶんと やせこけ ぼろぼろ の じょうたい で かえすには ふあん が あった

この子 に しあわせ に なってほしい と おもうくらいに 鶴丸国永 は 黒猫 を きにいっていた

「君はどうやってここにきたんだろうな」

そういえば 黒猫 は め を まんまるにして 鶴丸国永 を みあげてきた

なぜだか なきそう な かおだ と おもった

そのひ 黒猫 は よういされた ふとん ではなく 鶴丸国永 の ふとん に はいってきた

あめつづき で はだざむい ので 鶴丸国永 も ちいさな ぬくもり を つつみこんで ぬくまっていた

すると黒猫がしなやかな肢体を媚びるようにすり寄せてきた。
明らかに”そういうこと”に慣れた動作に、鶴丸は微睡んでいた意識を叩き起こし、黒猫の肩を掴んで体を引き剥がした。
「君、なんでこんなこと…」すると黒猫は艶やかな笑みを浮かべ言った。
「今までのお礼だよ。男とするの初めて?ま、あんた女に困らなさそうだけどね。嫌なら目を瞑って寝てればいい。大丈夫。ちゃんと天国見せてあげられるよ」
パシン。と。
思ったより軽い音だなと黒猫―清光は思った。
鶴丸は、清光をはたいた鶴丸の方こそ泣きそうな顔を一瞬して、その割に冷静な声で言った。
「俺は、そんなことのために君を助けたわけじゃない」
「知ってるよ。でも俺にできるお礼なんてこれぐらいだから。俺はこれしかできないから」
「ここに居てくれればそれでいい」
「それはダメだよ。あんたの迷惑になる。俺はあそこに帰らなくちゃいけないんだ」
「迷惑だなんて思わない。君のためならなんでもする。だから、どうか、一緒に居てくれないか」
そういえば清光は泣きそうな、それでも酷く幸せそうな顔で笑った。
「ありがとう。あんたにそう言ってもらえて嬉しい。でも、ダメなんだ。帰らないと母さんが。だから本当はお礼なんかじゃなくて、俺が一度だけでいいからあんたに愛された思い出が欲しかったんだ」
無理だったけど、と清光は俯いた。
「…君の母親なら、俺の知り合いの病院に転院してる」
え、と清光は俯いた顔をすぐに上げる羽目になった。
「すまん。君の事は調べられる限り調べた。母子家庭で母親は体が弱くその日の暮らしにも困っていた。そんな時、君もつれて住み込みで働ける口を紹介されたこと。その母親が病に倒れて、それをたてに君が色々強要されていたこと。だから、その母親を知り合いの病院に入院させたんだ。金の心配ならいらない。しっかり治療もしてくれてる。困窮していたところを助けてもらった恩義なら感じる必要はない。そんな物はとっくにマイナスだ」
急な展開についていけず目を白黒させる清光の頬を包みながら鶴丸は聞いた。
「だから、君の周りの事情は気にする必要はない。どうか君の心の本当のところを聞かせてくれないか」
黒猫は花が綻ぶように笑った。

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